『だいすき』 ハンス&モニック・ハーヘン作 マーリット・テーンクヴィスト絵   野坂悦子、木坂涼訳


オランダの作家と画家の詩画集です。

 訳はわたしの好きな詩人、木坂涼さんです。
 幼い少女の瞳に映った日常のつぶやきが、美しい詩になっています。
 絵のなかの少女が、魔法使いになったのでしょうか、いくつかは、おまじないのことばとなって、私の生活にも浸透してしまいました。


   おおきな あし

わたしの あたらしい くつは
とっても おおきい
あるいてちょうだいって
せかいじゅうが まってるの
 新しい靴を買うたびにこの詩をおもいだします。この靴をはいて、私を待っているところに行かなくちゃって。いろんな街々、いろんな国々、いろんな海や山へ。


   よる

あたりは くらいし もう ねむるじかん
だれど もうちょっと まどのそばに いよう
となりの ねこが
そとへ でていく

かぜのおとが きこえる
きが ゆらゆら ゆれて
やねを トントン たたいている
「きみも そとへ おいでよ」って

だけど でては いけないの
おそいし
あたりは まっくらだし
とおりは しおんとしている

となりの ねこが
かえってきた
カーテンを しめよう
よるが はじまるように
 カーテンも雨戸も閉めた、ネコは眠った、パジャマに着替えた、歯を磨いた、布団をかけて、スタンドの灯を消そう、さぁ、これから夜がはじまるぞ、って思って目をつぶります。安心して眠りにつけます。


 
   ゆめ

よる まだ おそくならないうちに
ねどこが あたたかくなってきたころに
ゆめを みるの
なにをしても いい ゆめ
なんでも できちゃう ゆめ
なんでも もっている ゆめ
でも
なきたい きもち
さみしい きもちだけは
もっていきたくないの
 ほんとにそう思います。こどもも大人も、だれでもみんな、いい夢をみれますように。