『長田 弘 全詩集』 

本を持つということ


 長田弘さんのほぼ全部の詩が収められた詩集です。長田さんが亡くなられる直前に出版されました。

 長田さんの本は、ほとんど持っています。でもこの全詩集も本棚に置いて、いつも目にふれていたいと思いすぐ求めました。白と薄緑色の表紙、カバーをとるとやさしい萌黄色の本。
出版社の方が、この全集ができあがり、長田さんの自宅へ届けに行ったとき、長田さんがこの本を愛おしそうに手にしたと書いてあったのを、どこかで読みました。

 長田さんの詩は、わたしの日常に溶け込んでいます。ふと、詩のフレーズが浮び、詩を読み返したくなる時がよくあります。すぐ本棚から取り出して本を開きます。こういう時間は自分にとってとてもいい時間です。もしこれから先、なにかの事情で、ごく少ない荷物で暮らさなくてはならないことがあっても大丈夫、この全詩集一冊があれば。

 また、本はそこに置いてあるだけで、語りかけてきます。そこにあるだけで安心です。読まなくてもその声に耳をかたむけて、日常を過ごしたいのです。
そういう本をもつことができたのは、幸せだと思います。