チューリップと映画

庭が急に華やかになった。たっぷりの日差しで暖かくなるとチューリップがいっせいに開花した。チューリップの明るさ愛らしさは格別。心を晴れやかにしてくれる。 最近立て続けにいい映画をみた。「スポットライト世紀のスクープ」「はじまりのうた」「ラ・ラ…

「重要参考人 ウイグルの強制収容所を逃れて」          

サイラグル・サウトバイ 秋山勝訳 図書館から借りてきて読みました。予約していた本ですが、次に順番待ちの方がいるので、早く読んで返却しようと思いました。しかし、一気には読めませんでした。読めないのです。つらくて苦しくなって中断…。何度息が詰まっ…

『狂うひと』「死の棘」の妻 島尾ミホ            

この著者が、ある作家から「きみは文がうまいからが、本を書いてみたらいい」と言われ、書き始めたということを読んだことがありました。文がうまいと言われた人の文章を読んでみたいと思い、この本を手に取りました。ですから、きっかけは島尾ミホや島尾敏…

ひと目で見分ける580種『散歩で出会う花』          ポケット図鑑

小さくても威力抜群 散歩が好きです。特に野の花が咲いている散歩道が。ひっそりと健気に咲いている野の花ですが、ゆっくり歩いていると目があいます。だからぜひ名前を知りたいのです。幼いときは、大人に聞いたり植物図鑑でしらべたりして花の名前をおぼえ…

『天使はブルースを歌う』

「光の多いところに強い影がある」ゲーテの言葉が浮びます たまたまYouTubeでみたなつかしいグループサウンズ特集のなかで、ゴールデンカップスに釘付けになりました。凄みのある姿と音楽はインパクトがありました。 グループサウンズ全盛期、私は10代前半。…

刑事マルティン・ベック

スウェーデンのストックホルム警視庁の殺人課主任マルティン・ベックの物語 1、『ロセアンナ』 柳沢由美子訳 2、『煙に消えた男』 柳沢由美子訳 3、『バルコニーの男』 高見浩訳 4、『笑う警官』 柳沢由美子訳 5、『消えた消防車』 高見浩訳 6、『サボ…

『コンビニ人間』

前々から気になっていた本 この作品が芥川賞を受賞した時は、味気ない題名にすぐに読みたいとは思いませんでした。しかし気になっていました。なぜならば、私も3年間コンビニでパートをしていた経験があるからです。どんなふうにコンビニが書かれてあるのか…

『月の満ち欠け』

リアル感のあるファンタジー 面白かったです。『身の上話』→『鳩の撃退法』→本作と読んで、いずれも最初は穏やかにゆっくりと入り、やや退屈な感じから、ある時を境に話が急展開しはじめ、その後は一気に読んでしまうというスタイルは同じでした。私の読書タ…

 『身の上話』

あり得ないことが日常にまぎれているという感覚(文中より) これは怖い小説です。 タイトルからして『身の上話』というありきたりの日常を連想させます。主人公のミチルは、一見どこにでもいそうな代わり映えのない女の子です。小さな事件は起こりますが、…

『ОUТ』

鬱屈する心のゆくえ『夜の谷を行く』で、桐野夏生に出会い、『顔に降りかかる雨』『デンジャラス』『柔らかな頬』と続き、桐野夏生ワールドにはまりました。 この『アウト』で、立ち止まりました。剛速球が立て続けにきたので、酸欠状態になりました。それに…

 『夜の谷を行く』

人生は続く…寝しなに本棚の古い文藝春秋を手に取って、パラパラとめくり、連載「夜の谷を行く」を読みはじめたら、はまった。この続きを読みたいと思った。もう単行本になっているはずだ。調べたら地元図書館にありすぐに借りに行った。寝るのも忘れて明け方…

 『一本の葦にはあれど』

35年を経て出会いましたこの本を地元の図書館で検索して、見つかったときはうれしかった。閉架図書となっていたので、職員から手渡されました。 出版は1981年。そのころの私の勤め先が、著者の加藤勝彦さんとご縁があって、この本を贈っていただきました。そ…

  『雪男は向こうからやって来た』

雪男とどういう遭遇をしたのだろうか…このタイトルからすると、角幡さんは、雪男の存在を肯定しているように思います。しかし、本当に遭遇したらこういうタイトルにはならなかったと思います。ではどんな遭遇をしたのだろうか、それと、そもそも角幡さんと雪…

 『スクラップ・アンド・ビルド』

感情の動きがリアルに描かれストレートに響く芥川賞作家の受賞作品です。 タイトルの「スクラップ・アンド・ビルド」からして、どんな古い概念が壊れ、どんな新しい概念が生まれるのかと思いながら読み始めました。 若者と高齢者の話なので、高齢に向かって…

「ホテルローヤル」 

作家の優しい眼差し 「ホテルローヤル」は直木賞受賞の話題作で、読んでみようと、図書館で借りようとしたら、なんとすごい数の予約待ちでした。では、順番を待つ間、この作家の他の本を読んでみようと思い、何冊か読みました。いずれも、読みやすく引き込ま…

   『凍原』

背筋がゾクゾクしました桜木紫乃さんのミステリーです。 釧路の湿原で男性の他殺死体が見つかりました。被害者はカラーコンタクトをしていました。その下には青い目……。 犯人はだれか。なぜ殺されなければならなかったのか。青い目が物語るのは…。私は、すぐ…

「蛇行する月」

女友達が恋しくなりました 桜木紫乃さんの本は、冬の寝床で読むのにぴったりの本です。 この冬は、風が強く、雲が吹き飛ばされた夜空に、月がそっと浮かんでいました。 夜毎、月は欠けていき、眉月になりました。細くなるにつれて月の光が強く感じたのは、こ…

 潮風のおくりもの 掛川恭子訳

ことばって、意味がわからなくても音でつたわるものがある やさしいまなざしにあふれた本です。島の最後の避暑客が去るとき、埠頭では、アコーディオン、バイオリン、サキソフォン、パグパイプを演奏して見送ります。 ある夏が終わり、潮風のおくりもののよ…

 『私の好きな孤独』

必要なときに語りかけてくれます長田さんの本はいつも手の届くところに置いてあります。 今朝、ふと手に取りました。ランダムに開いて、読みました。今日は、「伯父さん」というページでした。長田さんの伯父さんのお話です。 たくさんの「ちょっとしたこと…

『星々たち』

哀しい星々の物語に浸りました 9つの短編が収められていて、1つ1つが独立していますが、全体を通して、塚本千春の13歳から40半ばまでの半生が描かれています。その前後に母咲子、娘やや子が描かれていますので女三代記ともいえます。そしてこの3人と関り…

『ターシャ・チューダーの手帳2017』

数少ない大のお気に入り これは、本ではありません。手帳です。 2年前から日記帳として愛用しています。 近くの書店やステーショナリー店にはおいてなく、今年の分は手に入れ損ねていました。 日記帳代わりになりそうなノートが手元にいくつかあったので、…

 『起終点駅 ターミナル』

雪と潮風の匂い、澄んだ余韻 映画を観て、原作を読んでみたいと思い、本を手にしました。桜木紫乃さんの本は初めてでした。まず、長編だと思っていたので短編であったことにおどろきました。1冊にこの他5つの短編おさめられています。 本の表紙の絵は、内容…

 『まいにち食べたい“ごはんのような”クッキーとビスケットの本』 なかしましほ

美味しい、体にやさしい、めんどうでない、この三つがそろっています 夫が、病気を患ってから、食べるものに気をつかうようになりました。 コーヒー、紅茶が好きな私たちに欠かせないのが、クッキーやビスケットです。何よりもお茶でくつろぐ時間が好きなの…

「薄情」

わたしの薄情 私は絲山秋子を信頼しています。絲山氏の「袋小路の男」の女主人公が「彼は作家です」と言い切る心情と同じだと思っています。絲山氏の本をもっと読んでいけば、その理由もはっきりするかもしれません。 いつものように、長くはない文章の間に…

「ナチスから逃れたユダヤ人少女の上海日記」 和田まゆ子訳

10代にただ1つの世界、生存だけをめざす世界にいた一人のユダヤ人少女の記録です 平成18年発行です。作者ウルスラがナチの迫害から逃れて上海で9年間を過ごし、戦後アメリカに渡り、それから60年経ての発行です。ウルスラは本のなかでのべています。「わた…

 「作りおきおかず180」 奥田和美

毎日の食事が楽で楽しくなりました こんな本が欲しかったです。奥田さんは、ブログ「たっきーママ」で大人気の主婦だそうです。ナットク!! ブログの読者は子育て真っ只中のお母さんや兼業主婦が多いそうですが、夫婦ふたり暮らしのわが家のスタイルにピッ…

『にぐるま ひいて』 ドナルド・ホール作 バーバラー・クーニー絵 もきかずこ訳

慎ましい暮らしの豊かさ この絵本も大好きなバーバラー・クーニーの絵です。クーニーがアメリカの自然、その自然に根ざした暮しをどんなに愛したか伝わってきます。 語り継がれてきたアメリカの古き良き時代の暮らしぶりを伝えています。10月 とうさんは …

『袋小路の男』

すてきな恋愛小説です 読み終えた後、もう一度読み返しました。すぐ続けて読むのは私には珍しいです。読み飛ばしたものがあったからではありません。いい気持ちをもう一度味わいたかったからです。 大日方日向子と小田切孝の物語です。ふたりは、高校の先輩…

『あなたと共に逝きましょう』 

リアルな描写、ずしりときました 図書館で借りた本です。読んで、自分の本棚に持っていたいと思う本と、そうでない本があります。この本は、持っていたいと思わない本です。だからといって、おもしろくなかったわけではありません。むしろ、とても面白くあっ…

『だいすき』 ハンス&モニック・ハーヘン作 マーリット・テーンクヴィスト絵   野坂悦子、木坂涼訳

オランダの作家と画家の詩画集です。 訳はわたしの好きな詩人、木坂涼さんです。 幼い少女の瞳に映った日常のつぶやきが、美しい詩になっています。 絵のなかの少女が、魔法使いになったのでしょうか、いくつかは、おまじないのことばとなって、私の生活にも…