『にぐるま ひいて』 ドナルド・ホール作 バーバラー・クーニー絵 もきかずこ訳

 慎ましい暮らしの豊かさ

この絵本も大好きなバーバラー・クーニーの絵です。クーニーがアメリカの自然、その自然に根ざした暮しをどんなに愛したか伝わってきます。

 語り継がれてきたアメリカの古き良き時代の暮らしぶりを伝えています。

10月 とうさんは にぐるまに うしを つないだ。
そこから うちじゅう みんなで
このいちねんかんに みんなが つくり そだてたものを
なにもかも にぐるまに つみこんだ。
 
家族みんなでつくったろうそくや楓砂糖、じゃがいも、りんご、はちみつ、キャベツ、かぶ。母さんが亜麻からしあげたリンネル、娘が刺繍したリンネル、息子がしらかばからつくったほうき……。荷車いっぱいに積んで、お父さんは、何日もかけて、丘を越え谷をぬけ、村々をとおりぬけて街にでます。そして積んできたものを売ります。品物を入れてきた箱や樽や空き袋も、そして荷車も、手綱も牛も全部です。
それから生活必需品やおみやげを買って、長い道のりを歩いて帰ります。
そしてまた、季節はめぐり、新しい一年が始まるのです。

これはターシャチューダーさんが愛した時代の生活です。ターシャさんは、都会を離れてバーモンドの山の中でこのような暮らしをしました。
私もやっと、都会を離れ自然のなかで自由な時間をもてるようになりました。季節の移り変わりを肌で感じながら、野菜や果物を育てて収穫したり、保存食を作ったり、着古した服や布から小物を作ったりする生活を楽しみたいと思います。
  
 自然との関りが希薄になってスマホを駆使する今の子どもたちは、この絵本を読んでどう思うのでしょうか。私にはまったく見当がつきません。感想を聞いてみたいなと思います。

 バーバラー・クーニーの絵本にでてくる人たちは、どの人もすくっとして姿勢がいいのです。堂々として気品があります。姿勢の悪い人はでてきません。胸をはって生きている明るさがあります。今回は、人物に加えて牛も羊もガチョウもそうです。そしてみんな小さな目が生き生きと描かれています。

 ゆったりと穏やかな気持ちにしてくれる本です。そして日々の暮らしを大切にしたいと思わせてくれます。