「蛇行する月」

女友達が恋しくなりました

 桜木紫乃さんの本は、冬の寝床で読むのにぴったりの本です。
この冬は、風が強く、雲が吹き飛ばされた夜空に、月がそっと浮かんでいました。
夜毎、月は欠けていき、眉月になりました。細くなるにつれて月の光が強く感じたのは、この本のせいでしょうか。

 道東の高校時代の図書部だった女友達のそれぞれの話です。
道東とは、その名のとおり北海道の東ですが、改めて地図を見てみました。
紋別、十勝、釧路、根室地方を指し、北海道のなかでは広い面積を占めるものの、人口は少ないようです。
地図を見ていると、登場する一人一人の顔が立ち上がってきました。

「だれでも、その人の一生は小説になる」と、だれかから聞いたことばを思い出していました。
生きるということは、ドラマをつくること。そしてだれもが小説になるということ。生きるということは、、蛇行しながら広い世界に向かっている、本当にそうだなと思いました。

 読みながら、自分の学生時代やかつての職場の女友達が浮かんできました。
久しぶりに会えば、すぐ昔の友達同士に戻り、お互いの近況を話したり聞いたりします。そんなとき、大きなドラマがさらっとでてきて、びっくりして相手の顔をあらためて見てしまうことがあります。「…大変だったねぇ…」「そうだったんだ…」と。
どの人も人生のドラマの主人公なんだと思わずにいられません。小説にならない人はいないということです。

 登場する人たちが、身近の人に思われ、身にしみました。
前回の本もそうでしたが、構成が巧く、人物に奥行が感じられてよかったです。