『朝の捜し物』   

豊かな感性に、立ち止まってしまいました

昨夜、送ってくれたとき
あなたは 初めて
夜の真中へ
高く高く私を抱き上げた
その場所に
私は 今も半身いるようだ
これが証拠とでもいうように
落ちているイヤリング
      「朝の捜し物」より

夜と朝が、とてもとても素敵です♡    

やがて
空は灰青色に
ほかのものは墨色におちついていく
静かな移り変わりを
赤ん坊を抱いて見ていた

先月死んだ妹が
そのような自然のことを
手伝っているようにおもわれる
自分で死んだ妹だけど
あの優しい妹が
地獄 というような所にいるとは思えない
自然の 何か小さな仕事を受け持たされて
今度は誠実に
それをやっているように思う
       「妹」より


暮れなずむ空を見ていると、この詩が浮かんできます。
自然の小さな仕事、というのがいいなぁと思います。


 「春近い日」「子へ」は、女性の体のなかを走る血管が透けて見えるような詩です。

 この詩集は、暮らしの中のどんなできごとも、かけがえのない美しさをもっているんだということを感じさせてくれます。私もその美しさを少しでもたくさん見つけたいなと思います。時々開く私の大切な詩集です。
 今はネットの社会になりましたが、古本屋さんはなくならないでほしいと思います。ふらりと入ったお店で思いがけない出会いがあるからです。この詩集がそうでした。